被相続人の財産がわからないと相続人間で遺産の分割についての話し合いや相続放棄をするかどうかの判断をすることが出来ません。
そのため、被相続人の財産が明確でない場合は遺産の調査をする必要があります。ところが、被相続人の財産を一括して管理している期間はないため、個別に調査をする必要があります。
それでは、不動産の財産の調査方法を確認してみましょう。
まずは自宅で調査
相続財産に不動産が含まれている場合、ご自宅で以下を探してみてください。
- 固定資産税の課税通知書
- 登記済権利書又は登記識別情報
- 売買契約書や贈与契約書
「固定資産税の課税通知書」について
役所によっては、「課税通知書」でなく「課税明細書」という名称であったり様々です。
1/1時点で役所が被相続人名義と把握している不動産の固定資産税額等が記載されており、毎年4月~5月に郵送されてきます。固定資産税についての通知ですので、登記されていない不動産であっても固定資産税が課税される不動産であれば記載されます。逆に、固定資産税が課税されない不動産については記載されていないので注意が必要です。また、土地区画整理中の土地の一部が記載されないときなどがあります。従って、後に述べる役所での調査も行うようにしたほうがよいでしょう。
固定資産税の課税通知書の宛先は、不動産の相続登記(相続での名義変更)がされると法務局から役所へその旨が通知され、自動的に被相続人から相続人へ変更されるので特に役所での手続きは不要です。ただし、登記されていない不動産(未登記の建物等)は、役所に納税義務者の変更届を届出ます。
法務局で相続登記をせず、役所で固定資産税の納税義務者の変更届も届け出ない場合は、被相続人名義もしくは相続人代表者名義で送付されるのが一般的です。
弊所では、相続登記と併せて、未登記不動産の納税義務者変更届までサポートしていますのでご安心ください。
「登記済権利書又は登記識別情報」について
不動産の登記名義人になった際に法務局より発行される、俗に「権利証」と言われるものです。
昔のは法務局の朱印が押印されたものですが、最近のは目隠しシールがされた用紙になります。
また、通常司法書士が表紙を付けて返却していることが多いでしょう。
権利証に記載されている不動産からその存在がわかります。
通常、不動産の名義変更をする際は権利証が必要になりますが、相続登記の際は原則不要です。ただし、登記簿上の被相続人の住所と「本籍地」もしくは「住民票除票」「戸籍の附票」記載の被相続人の住所が異なる場合には必要になります。
「登記済権利書又は登記識別情報」について
不動産を取得した際、後日の紛争防止のため、「売買契約書」や「贈与契約書」を作成するのが一般的です。
「売買契約書」や「贈与契約書」がお手元にあれば、記載されている不動産からその存在がわかります。
相続した不動産を売却する際に課税される譲渡所得税の計算には、売買契約書を使用する場合があります。譲渡所得とは、不動産の売却代金から不動産の購入したときの代金(=取得費)と売却するときにかかった費用(=譲渡費用)を差し引いた利益(=売却益)をいい、その利益に対して所得税と住民税が課税がされます。売買契約書があれば、被相続人が不動産の取得が購入したときの代金がわかるので売買契約書は大切に保管しておきましょう。
次に役所で調査
自宅で調査した資料や被相続人からの話をもとに以下の調査をします。
- 市町村役場で名寄帳・評価証明書の取得
- 法務局で登記事項証明書の調査
市町村役場で名寄帳の取得
不動産のある役場で名寄帳というものの発行を請求します。名寄帳とは「その市町村内の被相続人が所有する不動産の一覧の書類」です。
名寄帳は各市町村ごとで管理しているので、被相続人が所有している市町村役場すべてで手続きをする必要があります。
なお、名寄帳は個人情報になりますので、請求者が、請求することが出来る権限を有することを証明するために、被相続人の相続人であることのわかる戸籍と本人確認情報の提示が必要です。
役所には名寄帳の他にも、評価額証明書や評価通知書等がありますが、これらは、不動産を特定して請求するため、請求者の把握していない不動産についてはわかりようがありません。一方、名寄帳は、その市区町村内の被相続人が所有する不動産の一覧が記載されているので、評価証明書よりも名寄帳の方が不動産の調査に適しています。
ただし、名寄帳に記載されている固定資産税が非課税である場合、相続登記の際には登録免許税の計算のため、一定の要件を満たす評価額証明書が必要になりますので、ご注意ください。
法務局で登記事項証明書の調査
不動産の所在がわかれば、あとは権利関係の確認のため法務局で登記事項証明書を取得します。
登記事項証明書には、所有権登記名義人が誰かの確認の他、「団信の保険金で支払わる住宅ローンの存在」や「生前に支払い終わった住宅ローンの登記の抹消をし忘れていたこと」が判明することがありますので、相続手続きの際に一緒に抹消登記をするとよいでしょう。なお、登記事項証明書はどこの法務局でも全国の不動産のものが取得できます。
まずはお気軽にご相談ください
当事務所では不動産の財産調査のサポートを行っていますのでお気軽にお問い合わせください。