「相続人の存在、不存在が明らかでないとき」や「相続人全員が相続放棄をして、結果として相続する者がいなくなった場合」は相続人の相続財産を法人化させ、その管理人を定めなければ取れない手続きになります。その、被相続人の相続財産を法人化させ、その管理人を定めることを「相続財産管理人の選任申立て」と言います。

相続財産管理人の申立てについて

申立人(申立てができる方)
利害関係人(被相続人の債権者、特定遺贈を受けた者、特別縁故者、葬儀費用を立替えた人など)、検察官
申立先
被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
申立てに必要な費用
収入印紙800円分
官報公告料3775円

※その他、家庭裁判所が手続きを行う際に使用する郵便切手を納めなくてはいけません。必要な郵便切手の種類・数は、各家庭裁判所で異なるので事前確認が必要です。

※予納金として数十万円~100万円程必要になる場合があります。予納金は相続財産があれば、そこから返金されます。

申立てに必要な書類
  • 相続人がいないことがわかるに足りる戸籍
  • 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
  • 財産を証する資料(不動産登記事項証明書(未登記の場合は固定資産評価証明書)、預貯金及び有価証券の残高が分かる書類(通帳写し,残高証明書等)等)
  • 利害関係を証する資料(戸籍謄本、金銭消費貸借契約書等)

※その他、各家庭裁判所によって必要書類が異なる場合がありますので事前確認が必要です。

申立て後の手続
申立後の流れはこちら

相続人が行方不明の場合は、相続財産管理人の選任申立てではなく、不在者財産管理人の選任申立て又は失踪宣告等の手続きで対応します。

不在者財産管理人の選任申立てについてはこちら
失踪宣告についてはこちら

相続財産管理人についてよくある質問

被相続人と長い間同居していたり、療養看護に努めていたなど被相続人と特別の縁故があった人に対して、相続財産が分与されることがあると聞いたのですが?

「特別縁故者に対する相続財産分与」という審判手続を通じて相続財産の分与を求めることができます。実際に分与が認められるのか、認められたとしてもどの程度認められるかは、裁判所の裁量によります。
「特別縁故者に対する相続財産分与」を求める人も、相続財産管理人の選任申立てをすることができます。
なお、相続財産の分与を求めることが出来る期間はきめられています。こちらをご確認下さい。

葬儀費用を支払いましたが、返してもらえますか?

返してもらえることが多いです。
裁判所の運用としては、相続財産管理人が、裁判所から権限外行為の許可を受け、社会的に相当と認められる額を相続財産から支出します。
なお、葬儀費用を立替ても、特別縁故者としての財産分与は認められず、権限外行為の許可で対応します。これは、葬儀費用の負担は、死後の縁故であり、死後の縁故しか無い者は特別縁故者と認められないためです。

被相続人の共有持分は、特別縁故者と共有者のどちらに帰属しますか?

民法では、「共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がいないときは、その持分は、他の共有者に帰属する」とあり、一方、特別縁故者に対する相続財産の分与も認めています。
では、どちらが優先するのでしょうか。最高裁判所の判断では、特別縁故者への財産分与の方が、共有者への帰属よりも優先すると判断されています。

相続財産管理人へ報酬の支払はされますか?

相続財産管理人が報酬付与の申立をすることにより、相続財産から支払われます。
なお、申立人が納める予納金は、相続財産が少なくて報酬が支払えないと見込まれるときに、相続財産管理人の報酬に充てるためのものです。

相続財産管理人の仕事はどのようなときに終了しますか?

相続財産管理人は、以下の事由の発生により、その職務が終了します。
① 相続人の出現(相続財産を承継して職務が終了します)
② 相続財産がなくなる(債権者や受遺者等へ全ての財産を帰属させると職務が終了します)
③ 相続財産を国庫へ帰属させる

相続財産管理人の選任申立て後の流れ

  1. 2) 相続財産管理人選任の公告(公告期間2か月)


    相続財産管理人選任の審判をしたときは、相続財産管理人が選任されたことを知らせるための公告をします。
    ※家庭裁判所が公告をします。

  2. 3) 債権申出の公告(公告期間2か月以上)


    相続債権者及び受遺者に対する債権申出の公告をします。また、知れている債権者には各別に催告をします。
    ※相続財産管理人が公告をします。

  3. 4) 相続人捜索の公告(公告期間6か月以上)


    家庭裁判所は、相続財産管理人の請求により、相続人の捜索の公告を行います。期間満了までに相続人が現れなければ、相続人がいないことが確定します。

  4. 5) 特別縁故者への財産分与の申立て


    財産分与を求める者から家庭裁判所に申立をします。この申立は、上記「4)相続人捜索の公告」の期間満了の翌日から3か月以内にする必要があります。

  5. 6) 財産の帰属


    相続財産法人から以下のとおり被相続人の遺産を帰属させます。
     ① 特別縁故者への財産分与が認められた場合は、その範囲で特別縁故者へ帰属(「民法第958条の3の審判」を原因として単独で所有権移転登記)
     ② 上記①がない場合は、遺産の共有者へ帰属(特別縁故者不存在確定」を原因として他の共有者に移転登記)
     ③ 上記①②がない場合は、国庫へ帰属

まずはお気軽にご相談ください

当事務所では相続財産管理人の選任申立てのサポートを行っていますのでお気軽にお問い合わせください。

なお、相続人がいないときにも、相続財産を法人化させない方法として以下の対策があります。出来るだけ、対策をしておく方が好ましいでしょう。
① 遺言書の作成をして遺産の全ての帰属を決めておく
② 養子縁組をして相続人を作り出す

遺言書について