相続不動産を売却して利益が出た場合、その利益が譲渡所得となり「所得税・住民税」が課税されます。
簡単に説明すると以下の計算式で出た利益に対して課税されます。
譲渡所得=譲渡価格(売却価格)-必要経費(取得価格+経費)
※取得費・・・不動産を購入した際の代金、仲介手数料、登記費用などの合計額。
購入代金が不明の場合は譲渡価額(売却金額)の5%を取得費の金額として計算することができます。
※経費・・・売却の際の仲介手数料、測量費、建物解体費用など売却のために支払った費用の合計額。
上記の計算結果、利益が出ている場合には譲渡所得税(住民税)が課税されます。課税税率は、被相続人がその不動産の所有者になってから売却した年の1月1日までの保有期間が5年超なのか5年以下なのかで税率が違ってきます。申告・納税は、売却の年の翌年2月16日から3月15日までの確定申告の期間におこないます。
但し、以下の特例の適用を受けることで、譲渡所得税を抑えたり課税されない場合がありますので、事前に確認をしましょう。
取得費加算の特例 | 居住用不動産の3000万円特別控除 | 空家の3000万円特別控除 | |
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対象不動産 |
相続不動産全て
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取得者の居住用
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被相続人の居住用であり現在空家
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対象者 |
相続税を支払った人
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取得者の居住用不動産を相続した人
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被相続人の居住用不動産を相続した人
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控除額 |
相続税額の一部
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3000万円
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3000万円
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売却期限 |
相続発生の翌日から3年10カ月以内
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なし
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相続開始日から3年目の年の12月31日まで
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「取得費加算」との併用 |
-
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○
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×
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1) 相続税の「取得費加算の特例」
相続税を支払っている場合は、支払った相続税額のうち一定の金額を取得費として譲渡所得の計算で必要経費に加算することができます。
相続税の「取得加算の特例」は、相続発生の日の翌日から3年10カ月までの間に相続不動産を売却した場合に適用があります。相続税を納税後相続不動産を売却される際に「取得費加算の特例」を受けるのであれば、売却する期間に注意して下さい。
2) 居住用不動産の3000万円特別控除
居住用不動産いわゆるマイホームを売却したときに売却利益が出た場合、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できます。この特例の適用を受ければ、譲渡所得が3,000万円までは税金が掛かりません。居住用不動産の売却ですので、原則として被相続人と同居していた相続人が対象になります。なお、この特例を受けるのに所有期間の長短は関係ありません。
建物を解体して更地にした後に売却する際は、以下の条件を満たす必要があるので注意して下さい。
- 売買契約が建物解体から1年以内に締結された
- 住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること
- 建物解体から売買契約締結日まで、貸駐車場などその他の用途に使用していない
3) 被相続人の空家の3000万円特別控除
被相続人の自宅を売却したときに売却利益が出た場合、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できます。この特例の適用を受ければ、譲渡所得が3,000万円までは税金が掛かりません。この特例は、以下の要件を満たす必要があります。
- 建物が昭和56年5月31日以前に建築されたこと
- 区分所有建物登記がされている建物でないこと
- 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと(一人暮らしであったこと)/li>
また、この特例は平成31年12月31日までの間に売却する場合に適用がある特例ですのでご注意ください。
■建物を解体して更地にした後に売却する際は、以下の要件を満たす必要があります。
- 建物→相続時から取壊時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に使用されていない。
- 土地→相続時から売却時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に使用されていない、かつ、取壊時から売却時まで建物の敷地に使用されていない。
■相続の開始があった日から3年目の年の12月31日までに売ること。
社会保険料についてもご注意下さい。
所得税・住民税の他に社会保険料が多くなる場合がありますのでご注意ください。一般的には以下のとおりですので、ご参考に各自ご確認ください。
- 健康保険・共済組合保険→社会保険料は変わらない
- 国民健康保険・後期高齢者医療保険→社会保険料はあがる
※扶養に入っている方は、加入している組合によって扶養から外れる場合、外れない場合がありますののでご注意ください。
相続不動産の売却は、上記のとおり多額の費用が掛かります。これを抑えるためには、上記の特例の適用を可能な限り受けれるような遺産分割協議をすることです。相続不動産の売却サポートは弊所が得意としている分野でもありますので、お気軽にお問い合わせください。