民法上、養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2つがあります。これらは、養子縁組の要件等、様々な相違点がありますが、相続において決定的に違うのは実親の相続人になれるか否かです。ここでは、「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の違いをみてみましょう。

普通養子縁組と特別養子縁組の違いをまとめると以下のとおりです。

普通養子縁組 特別養子縁組
養親の婚姻要件 単身者・独身者も可能 婚姻している夫婦の双方(夫婦共同縁組)
養親の年齢要件 成年(婚姻している未成年は可) 夫婦ともに成年で一方が25歳以上
実父母の同意 親権者の同意が必要。養子が15歳以上の場合は不要。 同意が必要
縁組の要件 特になし。
(未成年者や被後見人等で一定要件に該当するときは家庭裁判所の許可が必要)
父母による養育が困難で子どもの監護が不適当
縁組手続 当事者間の合意の上、戸籍法の定める届出 6か月以上の期間お看護状況を考慮し、家庭裁判所の審判
実父母の相続人になれるか なれる なれない
戸籍の父母欄の記載 実父母と養父母の双方が記載される 養父母1組の氏名のみ
戸籍の続柄の記載 養子、養女 長男、長女(実子と同じ)
戸籍の身分事項欄の記載 養子縁組の記載あり 民法817条の2と記載され、養子縁組の記載はない
離縁 原則 当事者の協議で可 原則 不可

養子縁組についてよくあるご質問

相続対策と関連した養子縁組はどんなのがあるの?

特別養子縁組は子の福祉のための制度ですので、相続対策として使用されることは考えられません。
一方、普通養子縁組は以下のような相続対策として利用されることが多々あります。

  • 相続税の非課税枠を増やす
  • 他の相続人の遺留分割合を減らす
  • 兄弟姉妹が法定相続人であるところ、妹を養子にすることで妹にのみ全てを相続させる
  • 相続人がいない方が養親になって法定相続人をつくりだして相続人不存在の状態を回避する

相続税対策について
遺留分対策について

兄弟姉妹でも養子縁組は出来るの?

養子縁組には、「(婚姻している場合を除き)未成年者は養親になれない」などのいくつかの制限はありますが、近親婚を禁止する婚姻のような、兄弟姉妹間の養子縁組を禁止する規定はありません。
但し、年長者を養子とすることはできません。
つまり、兄(姉)が養親で弟(妹)が養子はOKですが、弟(妹)が養親で兄(姉)が養子はNGです。当たり前ですね。

養子縁組をしたときに戸籍はどうなるの?

以下のとおりケースによって異なりますので、必ず養子縁組前に確認しましょう。

<養子が婚姻していない場合>

  1. 現在の養親の戸籍に入る
    養親が戸籍の筆頭者やその配偶者で、養子が別の戸籍にいる場合です。
  2. 新しい養親の戸籍に入る
    養親が戸籍の筆頭者以外で、養子が別の戸籍にいる場合です。
  3. 今のままの戸籍
    養親と養子がもともと同一の戸籍に入っている場合です。例えば、婚姻のときに姓を改めなかった父が離婚し、その父と同一の戸籍に入っている子が、父の再婚相手と養子縁組をする場合です。再婚相手は父と婚姻することにより父の子と同じ戸籍に入りますが、そのままでは法律上の親子ではないため、法律上の親子関係をつくりだすために養子縁組をするのです。

<養子が婚姻している場合>

  1. 今のままの戸籍
    養子が戸籍の筆頭者の配偶者の場合です。
  2. 新しい養子夫婦の戸籍をつくる
    養子が戸籍の筆頭者の場合です。この場合は配偶者も養親と同じ氏になり、養子の戸籍に入ります。但し、養子の子は従前の戸籍に残ります。養子の子を新戸籍に入れるためには、市役所で届出をする必要があります。
普通養子縁組と特別養子縁組はどうやって見分けるの?

上記の表のとおり、普通養子縁組と特別養子縁組では戸籍の記載が異なります。
戸籍をしっかりと読み取っていきましょう。特に特別養子縁組は幼少の頃に行うものですので、その点も念頭に確認してみるとよいでしょう。